

ある日の結婚式でのこと。
その新婦は幼い頃、お父さんを亡くしました。
彼女は、ずっと独身だった、お父さんのお兄さん、つまり伯父さんに育てられました。
「それでは、新婦のおじさまからご挨拶をいただきたいと思います」
司会者の言葉で伯父さんが出てきました。
伯父さんはどう見ても、普段スーツを着慣れていないことが一目でわかる、言い方を選ばずにいえば、典型的な「田舎のおじさん」でした。
人前が慣れていないのでしょう。
その伯父さんは離れた席から見てもわかるくらい、あがっていました。
伯父さんは緊張しながら話し始めました。
「えー、あー……、〇〇ちゃん、結婚おめでとう」
緊張がピークに達したのでしょうか。
伯父さんはそのまま黙り込んでしまいました。
10秒、、
20秒。
会場は沈黙に包まれました。
心配そうに伯父さんを見守る新婦。
会場にいたすべての人たちがハラハラしながら見つめていました。
長い沈黙の後、伯父さんはふと顔を上げて一言だけ発しました。
「幸せになってください」
それだけを言って伯父さんは頭を下げ、また不器用にステージを降りました。
この一言で、会場の緊張は涙に変わりました。
「幸せになってください」という、普段お祝いの場で当たり前のように言われるこの言葉。
しかし、伯父さんが精一杯発したその言葉は、聞く人たちに与える感動が違いました。
それまで一生懸命気丈に振る舞おうとしていた新婦は、顔をくしゃくしゃにして泣いていました。
お世辞にも上手とはいえません。
それどころかどう聞いても不器用です。
しかし、真実であり、心のこもったそのたったの一言で、親代わりとなって、たった一人で新婦を育てた伯父さんと新婦のここまでの道のりと背景が、そこにいる人の心の中で映像として流れ込んだのでした。
伯父さんの精一杯の愛が会場を包んだ奇跡の瞬間でした。